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2009.09.30 (Wed)

【観察】 道を究めた者の姿 <通勤電車に見るビールの達人> 編

極真カラテ創始者の、故・大山倍達総裁は言いました。
「武の道においては千日を初心とし 万日の稽古をもって極とす 」

つまり、3年程度稽古を続けてようやく初心者。30年続けてやっと一人前。といったところでしょうか。武の道は長く、険しい。
武の道だけではなくて、『会社勤め』にも通じるものがあります。(ちょっと悲しいけど・・笑)

その30年間の会社勤めにかかる、毎日の『通勤電車』での時間も、意識をして自分の道の修行の場として過ごす者と、そうでない者の間には、過ごす年数とともに大きな差が開いてきます。

私が通勤電車で時おり見かける、「これはスゴイ!」と深く感動した、「達人」をご紹介します。


●●
<帰りの電車での達人的ビールの飲み方>

夜、帰りの電車の中で缶ビール(発泡酒とか第三のなんとかも含む)を飲む人がいます。東京から鎌倉とか逗子まで乗っている間だけで1時間かかるわけですから、我慢できないのでしょう。揺れる車中で立ったまま飲みます。
そこにも長年の研鑽を積んだ達人の姿があります。
座席に座って飲んでいる人の話は省略します。そこに技術は必要無いので。(笑)

ドア横に立って、背中をもたれかけて、片手にビール、片手に文庫本、という人がいます。こんなのはまだまだです。大山倍達総裁の言う「千日を初心とし」にも至っていません。

究極の達人の姿をご紹介します。
まさに年のころは60才前後の、前頭部が禿げ上がった、風采の上がらないしなびたオヤジです。60才前後ということは、勤続30年以上=「万日の稽古をもって極みとす」の体現者であります。

この達人は、何かにもたれるでもなく、つり革につかまるでもなく、車中に普通に立っています。車両の微妙な揺れに逆らうことなく、やわらかく足腰を動かしてしかも上半身は安定している様は、老練な太極拳の大家の姿に通じるものがあります。

右手にビールを持ち、左手に単行本(小さな文庫本ではない!) を持っています。この右手のビールの持ち方に注目したい。
指でOKサインを作るがごとく、親指と人差し指を丸くして、その2本でビールの缶を持つのです。残りの3本の指で、適宜、読んでいる本のページをめくります。

ときどき、電車が大きく揺れます。このときも、達人ならではの対処を見せます。
達人は、ビールを持った右手の残りの3本の指で、つり革につかまるのです。OKサインでビールの缶を持ったまま! 見事です。

さらに、驚くべき行動に出ます。
揺れが収まると、彼はつり革から右手を離し、その3本の指で反対側の手にあった本を持ち(読んでいるページに指1本はさんで!)、空いた左手を背広の右側の胸ポケットに突っ込みます。
胸ポケットから出してきた左手には、なんと! いくつかの適量の柿ピーがつままれています。それを口に放り込みます。
なんと彼は、封を開けた柿ピーを、背広の胸ポケットに入れているのです。すぐに取り出せるように。

本を持ったままの右手からビールをゴクンとひと口飲み、すかさず左手から少々の柿ピーを口へ、という行動を繰り返します。
見る限り、取り出すピーナッツと柿の種の数のバランスも、絶妙です。

また不意の揺れに備えて、本を左手に戻し、右手のOKサインで缶を持ちながら残り3本の指でつり革につかまります。

手持ちの缶を飲み終わると、背広の別のポケットからコンビニ袋を取り出し、空き缶をそこに入れ、入れ替わりに新しい缶を手に持って2缶目に取り掛かります。つまり、コンビニ袋に入れたもうひとつの缶ビールを、また別のポケットに入れていたのです。
ゆるんだ体の線によって、見事にポケットのふくらみをカムフラージュしているところも心憎い。


ここで私は、また重大な事実に気がつきます。
彼は電車に乗り込む前に、
『350ml×1缶』と、『500ml×1缶』を購入しているのです。

この、缶の「選択」にご注目ください。
計850mlです。
350mlを2缶(計700ml)でもなく、500mlを2缶(計1000ml)でもありません。
面倒にも、大きさの異なる缶をひとつずつ用意しているのです。
350ml缶と500ml缶は、キオスクの冷蔵ケースにも別の段に入っていて、取り出すにもひとつ余計に手間がかかるはずです。

にも関わらず、彼は「計850ml」を用意している。

これこそ、何年にも渡る研鑽の結果、彼が至った「帰宅までに飲みきる適量」なのです。
これまでに、幾度の失敗があったことでしょう。

ほほう・・私は思わずため息を漏らしました。

電車は彼の自宅があると思われる駅に到着。まさにぴったりのタイミングで350ml缶と500ml缶をひとつずつ飲み終えた達人は、網棚に乗せていたカバンを下ろし、空き缶の入ったポリ袋も持って、ゆらりゆらりと降りてゆきました。


こうして勤続30年。(たぶん)

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テーマ : 日々の暮らし ジャンル : ライフ

21:42  |  通勤電車で観察  |  トラックバック(0)  |  コメント(0)  |  編集  |  Top↑
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