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2012.11.20 (Tue)

〈スーパーのレジで妄想〉緊張感の伝染

市内の地元スーパーが廃業して、その建物にまた市内の別の地元スーパーが入った。そのまま契約延長となった店員さんもいれば、新しく雇用されたバイトさんもいる。

私の最近のお気に入り(?) の観察対象は、おそらく高校生かあるいは大学に入ったばかりと思われる、ニキビ面の少年だ。土日の日中にレジに立っている。ひょろりと痩せて長身、日焼けをしていない青白い顔だ。見るからに気が弱そうだ。

仕事に全然慣れていない。「いらっしゃいませ」とか「ありがとうございます」といった、基本中の基本のあいさつ言葉も、毎回舌をかんでいる。「いらっつぁいさいまつぇ、せ (原文ママ) 」。こちらに寛容な心が無いと、何を言っているのか聞き取れない。

スズキヤ
写真はイメージで本文とは関係ありません。webより勝手に拝借しました。

●●●
先週の日曜のことだ。
私はいつも398円のワインを買っているが、たまに贅沢をしようと(苦笑)、張り込んでいつもより高い「500円ワイン」を手に取りカゴに入れ、彼のレジに並んだ。500円だがチリ産の濃厚な赤ワインだ。底にオリが溜まっている。私は四角いカゴの中でボトルが倒れないよう、隅っこに立てかけて注意深くレジまで運んだ。

彼は、がちがちに緊張した様子で「いらっつぁいさいまつぇ、せ (原文ママ) 」と絞り出すような声を出し、おもむろに私のワインをばたん、と横に倒してレジのバーコード読み取り機に当てた。
「ああ・・・」声にならない声を上げる私。何も気がつかない、がちがちの少年。まあ、もしかしたら未成年かもしれないから酒のことも知らないのだろう。

緊張のピークはこのあとやってきた。
彼は私から受け取った千円札を、最新のレジの機械の、ある部分に入れようとしている。おそらくそこにお札を入れれば、自動的に札の種類と枚数をカウントするのだろう。

ところが、入らない。慣れていないせいもあるが、1枚の千円札はふわふわと不安定に曲がり、緊張して震える指の先で、ぶるぶると波打っている。
なかなか入らない ⇒ますます緊張する ⇒ますますぶるぶる震える ⇒ますます入らない・・・という、一連のループができてしまい、しかもその悪循環ループの力は大きくなるばかり。震えはどんどん激しくなる。

先ほどからいらいらした素振りを見せていた私の後ろに並んだ初老の男性が、「ちっ」と舌打ちする。
それを耳にして少年はますます緊張し、千円札はますますぶるぶる震える。

私に非があるわけではないが、この環境に身を置いて、私も緊張してきた。彼の緊張が伝染してきた。
すごく緊張してきた。
うしろの男性から私まで責められているような気がしてきた。

私はこの緊張の理由について想像した。いや、勝手にこんな妄想が頭に沸いてきた。










私の差し出したその千円札。それは、、、、ニセ札だ。私が作ったのだ。苦心して作ったのだ。
今日、初めて使ってみた。

私は、そのニセ札がばれないかと、ハラハラしている。
その機械を通った瞬間、うまく誤魔化すことのできる精巧な贋作か、あるいは駄作かが、明らかになる。
後者の場合、つまりバレてしまった場合は直ちに警備員が駆け付け取り押さえられ、そして警察に身柄を渡されるだろう。

たまたま、目の前の小僧は何かの理由で手が震え、機械に入れるのに手間取っている。頼む。うまく入れてくれ。うまく通してくれ。俺のニセ札を。
額に汗がにじむが、晩秋のこの季節に汗をぬぐうのも不自然だ。早く通してくれ・・・。

「せ、しぇんいえん、せんいえんからおあづかりひましゅ(原文ママ)」。
小僧はようやく千円札をレジに通し、チャリンという音と共に自動で出てきた500円玉のお釣りを私に返した。

ふ~。
バレなかった。うまく騙せた。

店の外に出て、ホッとして今買ったばかりのワインのフタを開け (もちろん安ワインだからコルクではなくスクリューキャップ)、逗子銀座商店街を歩きながらラッパ飲みした。

後方にパトカーのサイレンの音が聞こえる。振り返らずに歩く。


完。



(監督:クエンティン・タランティーノでお願いします)

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テーマ : 日々のつれづれ ジャンル : 日記

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