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2016.02.25 (Thu)

〈考察〉『地球最後の男 オメガマン』の正体

よく見る関数のグラフで、こういうのがありますよね?
xをいくら増やしても、yは限りなく1に近づくのだけども、どこまで行っても1にはならない。
(図を参照)
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マーケティング関係の本だと、x軸が「広告を流した量」、y軸が「その広告を見た人の割合」というグラフをよく目にします。どんなに大量に広告を投下しても、理論上は「その広告を見た人の割合」は決して100パーセントにはならない、というわけです。

日常生活においても、情報にニブいオヤジたちと話していると(私もオヤジですが 苦笑)、「これだけあちこちのニュースで取り上げられている話題なのに、どうして知らないんだろう?」「こんなに人気のあるタレントなのに、どうして見たことないんだろう?」「すごくよく売れてる話題のベストセラー商品なのに、どうしてわからないんだろう?」ってことがしばしばありますよね。どんなにたくさんテレビに出たりお店で見たりするものでも、必ず「知らない・見たこと無い」という人が存在します。

この、グラフ曲線と「1」の間の細~い隙間にいる人って、いったいどういう人たちなんでしょう? 疑問に思ったことはありませんか? テレビもネットも見ないんでしょうかね? 街にも出かけたりしないんでしょうか?

「新しい情報」に限らず、「昔からある常識」等も含めて、〝大多数の誰もが知っていて当然なことであるにも関わらず、知らなかった(はじめて知った)〟という人のことを、『地球最後の男 オメガマン』と名づけました。1970年代のチャールトン・ヘストン主演のSF映画のタイトルです。噛まれると吸血鬼になる伝染病で人類が滅亡(ほぼ全員が吸血鬼化)した後、ひとり抗体を持っていて感染しない男の話です。

私の知人にも典型的な『オメガマン』がいます。いくつかエピソードがありますのでご紹介します。

映画の『オメガマン』は自らの血液から血清をつくり、人類を救おうとする〝伝説の男(原題 I AM LEGEND)〟となるのですが、下記のエピソードに登場するオメガマンは果たしてどうなのでしょうか?

●オメガマン エピソード1 〈スターウォーズのフォースも効かない?〉
先日、2月初旬のことです。50代男性3人で話をしておりまして、何の話の流れだったか忘れましたが、私が「遅まきながらスターウォーズの新作を観たがとても面白かった。彼らと同じく我々もそれぞれの30年を過ごしたのだと思うと感無量だった」というような話をしました。
そしたら、オメガマンがひとこと・・・

「面白そうですねえ! その新作、最近公開されたんですか?」

え? もうずいぶん前、12月からやってますけど・・・。
すごく興味がありそうな目でにこにこしながら言い出したのが余計に不気味でした。
公開のずいぶん前から始まった、年末年始を通してのあれだけの大量の広告やプロモーションに接していない、あるいは接していても印象に残っていないというのはどういうことでしょう?

●オメガマン エピソード2 〈男の本能にようやく気づく?〉
50代男性3人で昼ごはんを食べに外出しました。道を歩きながら、オメガマンが興奮気味に話し始めます。
「昨日の、松本清張原作のドラマ見ました?」
「いいや、見てない」と全員首を振ります。すると、オメガマンはものすごく重大な発見をしたという様子で、得意げに声を張り上げてしゃべり始めます。

「何十年もずっと真面目に商店をやってた年寄りジジイが、若い女にそそのかされて、強盗殺人やっちゃうんですよ。あれ、男の本能だと思うんですよ。年取ってジジイになっても若い女にちやほやされたいって、絶対、男の本能だと思うんですよ」

「男の本能だと思うんですよ」に力を入れて2回繰り返しました。
世の中のほぼすべての小説や映画はそういう男の本能から生じた事件を描いているわけで、至極当たり前の話なので、我々は当然彼はその後にさらに何か続けるのだと思い、皆、「ふんふん」と軽くうなずくだけで彼の言葉を待っていました。

ところが、彼の言いたいのはその一点だけだったのです。彼は、皆の反応が鈍いのは「いくつになっても若い女にちやほやされたいというのは男の本能」という自分の考え(彼にとっては大きな発見)が賛同を得られていないのだ、と解釈して、ますます声を張り上げて同じ話を繰り返します。

「えっ? 30年以上もまじめに働いてきたのを、若い女のために全部台無しにしちゃうんですよ!スゴくないですか? それって男の本能だと思うんですよ。え?そう思いませんか?」

横断歩道ですれちがう人たちが我々を変な目で見ています。同僚の一人がたまりかねて言いました。
「それ、当たり前だよ。昔からいろんな小説のテーマだよ」

オメガマンは、まだ自分の大発見に皆がさほど驚かないことに納得が行かない様子でした。

●オメガマン エピソード3 〈オシャレな料理といえばフランス〉
50代男性4人で昼ごはんを食べに出ましたが、出遅れました。いつも行くお店はどこも満員。入ったことのない店にトライすることにしました。
入り口のメニューを見ると、数種類のパスタとラザニアやリゾット等、OLさんの好きそうなランチメニューが並んでいます。にんにくやオリーブオイルのいい匂いが漂っております。

案の定、おしゃれなOLさんたちで店内はいっぱいですが、入り口そばのテーブルだけ運よく4席空いています。「いいですか?」と店主らしい男性に声をかけて入店しようとしましたところ、店主は一瞬、わずかに嫌そうな表情を浮かべましたが(私は見逃しませんでした)、すぐに笑顔に切り替えて「あ、どうぞ」と我々を招き入れます。

店内には、各種パスタを入れたガラスのビンや、カラフルなラベルのワインの空き瓶、シチリア島の古地図を模したワインの産地を示した図、オリーブの小枝などが飾られております。

オメガマンが、ぐるりと店内を見渡して席に着くなり、大きな声で言いました。
「あー、ここはフレンチですね!」

隣のテーブルのOLさんたち、そして店主がびっくりした顔でこちらを見ます。我々は、彼がこれから深遠な話を始めるものだと思い、先の言葉を待ちました。ここはフランス人があこがれるイタリアの様子を模した、実はフランス料理がベースのレストラン、というふうな手の込んだ演出が見て取れた・・・みたいな。

ところが、彼は皆の返事が無いのでもう一度同じ言葉を繰り返すのみ。大きな声で、「ここは、フレンチですね!」

私が指摘します。「いや、イタリアンだよ」
「え? フレンチじゃないんですか!?」とまた大きな声で繰り返すオメガマン。
「だって、どれもイタリアの料理じゃないか。それにイタリアの地図も国旗も飾ってる」

最後まで納得の行かない様子のオメガマンでした。

●オメガマン エピソード4 〈TPOも関係ない〉
エピソード3の続き。
各自注文した料理が出てきました。OLさんだらけの店内で、先ほどの「フレンチ」騒ぎで居心地の悪い我々。「若いOLさんでいっぱいだね」と小声で話をしていましたら、再びオメガマンが始めます。大きな声で。

「最近の若い女の子がスタイルがいいのって、オレ思うんですけど、絶対、家庭に洋式便所が普及したからだと思うんですよ」。

また静まり返る我々。
そんな説はもう30年以上前から言われているし、他にお客さんのいる食事の場で大声で「便所」はやめろ。

また皆が反応しないので、彼は自分の意見(彼にとっては大きな発見)を皆理解していない、あるいは理解していても賛同していないものだと思い込み、さらに大きな声で主張を続けます。

「最近の若い子のスタイルがいいのって、絶対、洋式便所が普及したからだと思うんですよ。え?思いませんか?」。この「思いませんか?」はオメガマンの口癖だ。他の者にとっては当たり前の周知の事実であるから反応が無いのを、彼は自分の新発見に賛同が得られていないと考えるのだ。

彼は続けます。「昔の家はみんな和式便所でしたよねえ? え? 違いますか?」・・・この「違いますか?」もオメガマンの口癖だ。皆、その話題に触れたくないから黙っているのを、自分の説が間違っているのか?と受け取り、確認をしているのだ。

オメガマンはまだまだ続けます。
「だって、和式便所って腰を落として膝をいっぱい曲げるじゃないですか。毎日毎日それやってたら膝の形が悪くなると思うんですよ。最近の若い女の子のスタイルがいいのって、オレ、絶対、洋式便所が普及したからだと思うんですよ。え? 思いませんか?」。
また繰り返している。顔を伏せる我々。

同僚の一人がたまりかねて言いました。
「君、さっきからオヤジみたいな話ばかりしてるよ」。

「え! そんなことないですよ。え? そう思いませんか?」
まだ言ってる。

(続く・・・かも)


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